わたしは、「ねぇ見て。前髪。」と友人に報告することが多い。
特に理由はない。というよりかはわからない。
なんとなく言いたくなってしまうのだ。
たいてい長くて目にかかっており、形が綺麗でうまい具合に右に流れてる場合が多いのできっと見せびらかしたいのだろう。
自分としても、「わぁ前髪がある。なんか長い。でも手触りいいなぁ」くらいにしか思っていないのだが、なぜか口にしてしまう。
報告された友人らも、困った顔をして黙り込むか、
「よかったね」「そうだね」「長いね」「…切らないの?」
などと答えをひねり出す。
五年以上の親しい付き合いである友人さえも困らせてしまうのだ。
それに不満を持っているわけでもないし、毎度毎度わけのわからない報告される友人らに申し訳なく思ってもいる。
しかしながらわたし自身もなんと言って欲しいのかわからないのだ。
せめてなにを求めているのかわたし自身がわかっていれば、「こういう時はこうしてね」と伝えられるのだが。
なぜこうにも前髪顕示欲がひどいのか。
前髪顕示欲に比べたら取るに足らないことなのだが、もう一つ前髪で困っていることがある。
2ヶ月ほど前に美容院に行った際に、パーマをかけ直した。
イキリキャシーはお洒落とは無縁の世界に生きており、朝に化粧や髪をコテでいじる暇があるなら寝てるようなタイプ(あと不器用なためコテは使えないと思われる)なのだが、パーマとカラーとピアスは朝の時間を取られないのでしているのだ。
少し逸れたが、2ヶ月前にパーマをかけ直した。
その際に前髪にもパーマをかけるかと美容師さんに聞かれ、わたしはよくわかんないけどやってもらうか、と思いお願いした。
今思えば、もともと右に流れる癖がついてるのかなんなのか、なにもせずとも勝手に右に流れているのにかける必要なんてなかった。
完成予想図がよくわからないまま前髪にもかけてもらったが、出来上がった当初は
「毎朝コテでいじってる人ってこんな感じにくるんってなってんな〜、パーマと同じことしてんのすげ〜」
くらいにしか思っていなかったが、数日経って気づいた。
ちゃんとやらないとこれひどい寝癖みたいになるぞ。
もともと全体的に適当で、夜ドライヤーするときに毛先をでろんでろんとやるくらいで、前髪に至ってはなにもしてなかったのだが、そうしていると前髪がカーニバルを開いてしまう。
かといって、毎朝手入れをする時間なんてない。
授業に間に合うのが精一杯なわたしに、カーニバルをどうにかすることを求めるなんて愚の骨頂だ。
仕方がないので、トイレに行った時などに水をつけてちょいちょい鎮静化を計っている。
幸い聞き分けのいい髪なのか、目も当てられない状態になったことは複数回しかない。
それをわたしは「前髪インフィニティ」と呼んでいる。
複数回あった前髪インフィニティのうちの一度は、正月に地元の友人と遊んだ日だったのだがその日に撮ったプリクラには「前髪インフィニティ」と書いてある。
ちなみに今日も前髪インフィニティとまでは行かずとも前髪インフィニティ気味である。
前髪顕示欲と前髪インフィニティ、生活を脅かすほどではないものの悩ましい事柄だ。