先週は、幼少期のイキリキャシーをおびやかしたミッキーマウスの話をした。
今週は幼少期のイキリキャシーをおびやかした迷信の話をしようと思う。
今でも心のどこかでおびやかされているかもしれない。
「夜に口笛を吹くと蛇が出る」
そんな迷信を聞いたことがないだろうか。
幼少期のわたしは、それにひどくおびえていた。
その迷信をリアルにしたのは二つの要因があると思う。
まずは、母が蛇年だったこと。
そのせいで、
「夜に口笛を吹くと蛇が出る。母が蛇になって襲ってくる可能性がある」
という認識でいた。
母がオリジナリティを加えるためにそう言ったのか勝手に解釈したのかわからずにいたが、ちょうど今母がいたので確認してみた。
どうやら後者だったらしい。
「わたしの父(イキリキャシーの祖父)から『夜に口笛を吹くと蛇が出る』って聞いていたからそれを教えた。蛇になって襲うとは言ってない」
とのことだった。
加えて、
「キャシーはそんなに口笛うまくないでしょ」
と謎の見解も示してきた。
お言葉だが、わたしは口笛がうまい。
鼻歌代わりに口笛を吹けるくらいにはうまいのだ。
「失礼な。わたしはドレミファソラシドだって吹ける」
と言い、披露して帰ってきた。
迷信を信じていたから、親がいる夜に口笛を披露する機会がなかったのだろう。
さて、閑話休題。
わたしが迷信を信じることになった二つ目の理由だ。
わたしの実家はそこそこな田舎にある。
一時間に一本のバスを使えば、30分で駅に行くことができるくらいの場所だ。
最近は開発が進んでいて家も増えたが、それもここ数年の話。
田んぼと畑と林と訛りの強いお年寄りとともに、イキリキャシーは幼少期を過ごした。
車にはねられた蛇の死骸を見てから、より一層口笛の迷信は恐ろしいものとなった。
さすがに二十歳を超えた今は信じていない。
気分が乗ったときは夜でも口笛は吹くし、蛇にもいちいち口笛に反応して出てくる暇はないことは知ってるし、出てきたところで追いやるかお亡くなりになってもらえばいいと思っている。
ただ、少し背徳感みたいなものはどこかで抱いている。
背徳感とともに夜に口笛を吹くのも悪くないのだ。