なんだか不穏なタイトルである。
しかし、幼いイキリキャシーはこの不穏なタイトルが似合うようなおままごとをしていたのだ。
一人っ子というのは寂しいものだが、それにしてもわたしのぬいぐるみに対する扱いはひどかった。
今日はぬいぐるみの話でもしようと思う。
一人っ子でなくても、多くの子どもがおままごとを経験するだろう。
たいてい舞台設定は家族だと思うのだが、イキリキャシー(5)は設定を病院にしていた。
あまりメンバーが多くても仕方ないので、枕元にいるぬいぐるみからたしか5人ほど選抜し、その都度設定を作っていたのだ。
本来鍋蓋に使われるはずなのであろう透明なプラスチックを酸素マスクに見立てていたのだから、大したマセガキである。
不謹慎極まりないことに、ぬいぐるみを危篤状態することも多かった。
そんなわけで、わたしは度々ぬいぐるみを危険にさらしていたのだ。
また、もう一つなかなかひどいエピソードがある。
これは本当に何を考えていたのかさっぱりわからないのだが、女の子のぬいぐるみの額に猫の耳を表す三角を描き、頬にヒゲを描いたのだ。
ここまでは百歩譲って良いとしよう。
油性ペンで描いているわけだし本来一歩も譲ってはいけないのだが、ここから先がひどい。
何を思ったのか、左右の頬に一文字ずつ「ね」「こ」と書いたのだ。
耳とヒゲを描き入れるだけでもかなり不可解だし褒められたことではないのに、挙げ句の果てには「ねこ」である。
別にわたしはねこのぬいぐるみに困っていたわけではない。
きちんとねこのぬいぐるみもいた。
それでもなおねこがほしかったのか、人間がねこになることに意味を見出したのか、今ではさっぱりわからない。
母にこっぴどく叱られながら、洗濯されて干されているその女の子のぬいぐるみを眺めていた光景だけはよく覚えている。
ちなみに描かれたパーツや文字は落ちることなく、今でもそのまま色褪せずに存在している。
子どもは不思議な行動をする生き物ではあるが、それにしても不思議なのがイキリキャシーだ。