最近オンラインで塾講師のアルバイトを始めた。
塾講自体は数年前からやっていたが、オンラインは初めてだ。
その塾では、初回の授業は社員の人を交えたアイスブレイクの時間となる。
そして私は、司会の社員が「先生から自己紹介お願いします」と言う瞬間を最も恐れている。
尤も、アイスブレイクなんだから必ず訪れる瞬間なのだが。
「来週から授業をやるイキリキャシーです」と名前だけ言ってごまかそうとするのだが、「今ハマってることは何ですか?」と追加で聞かれてしまう。
自己紹介は自己を紹介するんだから、趣味くらい言わなければいけないことはわかっている。
ただ、困ったことに私には趣味がないのである。
暇な時やっていることも特に趣味と呼べるようなものでもない。
そもそも一般的な趣味ってなんだ、と思い「趣味」と検索してみるものの、「おすすめの趣味」「モテる趣味」というランキングが出てきて余計困惑した。
モテる趣味ってなんだ。
とにかく、私にはこれといった趣味がないのだ。
適当に嘘をついたら、生徒や社員に深く聞かれてしまった場合詰んでしまう。
それなら、ちょっとは好きなこと、そしてちょっとニッチなところを攻めていく方がいい。
最近の自信作は、
「少し古めの洋楽を聴くことが好きです」
である。
実際2017年あたりの洋楽は好きだ。
というか、最近の洋楽はあまり好きではないし聴いていないのだ。
これで「洋楽が好きです」なんて、にわかのイキリである。
ペンネームはイキリキャシーだが、そういう痛々しいイキり方はしない。
話がそれた。
だから私は「今ハマってることは何ですか?」というフレーズがすこぶる怖いのだ。
最近久しぶりに新しい生徒を担当することになった。
ということは、自己紹介も久しぶりだ。
「今ハマってることは何ですか?」と聞かれた瞬間、私は「しまった!油断した!」と心の中で頭を抱えた。
いつも以上に追い詰められた私は、
「今ハマってることというかものなんですけど、アイスボックスに三ツ矢サイダーを入れたものにハマっています」
と言ってしまった。
実際アイスボックスに三ツ矢サイダーを入れるとかなりおいしい。
夏の間はだいぶお世話になった。
しかし9月上旬という、だんだん涼しくなり始めた時期。
「今おすすめしても意味ない!そもそもハマっていることを聞かれてる!ものじゃない!しかもこれは友達同士の自己紹介じゃない!何でこんなわけわからないこと言ってしまったんだ!アイスブレイクだからといってアイスの話題を出すんじゃない!」
なんて内心大騒ぎしながら、
「よろしくお願いします」
と自己紹介を締めた。
なお、生徒はまともな趣味を紹介してくれた。
アイスボックス野郎ですまなかった。